離婚で弁護士に約90万円払った。それでも頼んでよかった。

結婚より離婚のほうが大変だ、とよく聞く。

離婚してみて分かった。

そりゃそうだ。

結婚するときは、好きな人とこれからの話をする。

どこに住むか。
どんな生活をするか。
これからどうやって生きていくか。

離婚するときは、その逆だ。

もう会いたくもない人と、これまでの後始末をしなければならない。

家はどうする。

預金はどうする。

家具はどうする。

子供のことはどうする。

しかも、お互い一番感情的になっている時期に、それを一つずつ決めていく。

そりゃ、精神的に削られる。

僕の場合、それが2年近く続いた。

だから僕は、弁護士を入れた。

母親の前で泣いた。でも弁護士はすぐ探した

妻から離婚を告げられた直後、僕はかなり混乱していた。

実家に帰って、母親の前で泣いたくらいだから、精神的にはまあまあボロボロだったと思う。

でも、不思議なことに一つだけ冷静だった。

弁護士を探そう。

離婚すること自体は、もう仕方がないと思っていた。

でも、お金のことはきちんとしたかった。

マンションもある。

夫婦で貯めたお金もある。

子供のこともある。

これを当事者同士だけで決めるのは無理だと思った。

無料相談を3人くらい回った

いきなり最初の弁護士にお願いしたわけではない。

無料相談などを利用して、何人かの弁護士に話を聞いた。

たしか3人目くらいだったと思う。

経験豊富そうな女性弁護士だった。

話していて、

「この人は離婚案件をかなりやっていそうだな」

と感じた。

それでお願いすることにした。

弁護士なんて、それまでの人生でほとんど縁がなかった。

だから選び方も分からない。

結局、

「この人なら任せられそう」

という感覚で決めた。

結果的には、この判断はよかったと思っている。

「この机どうする?」にも何か月かかかる

弁護士を入れれば、すぐ離婚できる。

そんなことはなかった。

僕の場合、離婚調停は2年近く続いた。

何か月かに一度、裁判所へ行く。

その間にも弁護士同士でやり取りをする。

また調停。

その繰り返しだ。

しかも、直接相手とは話さない。

たとえば、

「この机、どうします?」

というだけの話がある。

普通なら電話一本で終わりそうな話だ。

でも離婚中は違う。

僕から僕の弁護士へ。

僕の弁護士から相手の弁護士へ。

相手の弁護士から妻へ。

返事は、その逆のルートを通って戻ってくる。

それだけで時間がかかる。

さらに、お互い感情的には最悪の状態だ。

すると、

机一つどうするか決めるのに、何か月もかかったりする。

離婚調停というと、ものすごい法律論を戦わせる場所を想像するかもしれない。

実際には、

「この家具どうするんだ」

みたいな話を延々やっていたりする。

今思えば、ちょっと笑える。

当時はまったく笑えなかった。

相手の弁護士まで途中で変わった

調停の途中で、相手側の弁護士が一度変わった。

理由は知らない。

本当の事情は、今でも分からない。

ただ、前にも書いたように、妻の母親はかなり強い人だった。

だから当時の僕は、

「向こうの弁護士も大変だったのかな」

と勝手に思っていた。

もちろん、これは完全に僕の想像だ。

権利書だけではなかった

以前、妻がマンションの権利書を実家へ持って帰っていた話を書いた。

実は、もう一つあった。

僕名義の銀行口座の通帳だ。

その口座には、夫婦で貯めていたお金が入っていた。

妻のボーナスなども、そこに入れていた。

その通帳も妻が持って帰っていた。

ただ、口座の名義は僕だった。

相手側にも弁護士がつくと、本人名義のものなので返却するよう言われたらしく、しばらくして通帳が郵送で戻ってきた。

離婚なんて、普通は人生で何度も経験するものではない。

当時の僕らは、法律のことなんてほとんど知らなかった。

権利書や通帳という「物」を持っていれば、何か意味があるような感覚があったのかもしれない。

マンションは売った

結局、マンションは売却した。

買ったときより、少し値段は上がっていた。

でも、残っていた住宅ローンを返して、売却にかかる費用などを払うと、だいたい相殺された。

マンションを売って大儲け、とはならなかった。

一方で、夫婦で貯めていたお金は財産分与できちんと整理した。

最終的に僕には500万円くらいのお金が入った。

もちろん、慰謝料でもなければ、離婚で儲かったわけでもない。

もともと夫婦で作った財産を分けただけだ。

それでも、当時の僕にとって500万円はかなり大きなお金だった。

「もう財産はありません」

財産分与を進めていると、相手側から、

「もう財産はありません」

という趣旨の話が出た。

でも僕は、一つ知っていた。

妻が勤務先で、給料から自社株を買っていたことだ。

いわゆる従業員持株のようなものだった。

そこで弁護士を通して、

「それなら勤務先に確認します」

と伝えた。

すると、その株の分についても話が進み、財産分与の対象として整理された。

正直に書く。

そのとき僕は、

「ざまあみろ」

と思った。

大人げない。

非常に大人げない。

でも、2年近く離婚調停をやっている最中の僕に、

「別れた妻の幸せを願っていました」

なんて言えるほどの人間性はなかった。

今さら立派な人間だったことにするつもりもない。

弁護士費用は、たしか90万円くらい

最終的に弁護士へ払ったお金は、記憶では90万円くらいだったと思う。

最初は、

「弁護士って、こんなにするのか」

と思った。

安くはない。

でも、今考えてみる。

2年近く僕の離婚に付き合ってもらった。

財産を整理してもらった。

相手側とのやり取りをしてもらった。

そして、

「この机、どうします?」

みたいな話まで間に入ってもらった。

そりゃ、金もかかる。

何より大きかったのは、

会いたくもない相手と、自分で直接話さなくて済んだことだ。

これだったと思う。

2年間、妻の顔を見なかった

実際、2年近く離婚調停をしていたのに、僕はその間、妻の顔を一度も見なかった。

調停では、夫と妻がそれぞれ順番に調停委員と話す。

同じ裁判所に来ていても、基本的には顔を合わせない。

僕にとっては、それがありがたかった。

もう妻と直接話したくなかった。

向こうだって同じだったと思う。

でも、最後の日だけは違った。

裁判官がいた。

僕がいた。

僕の弁護士がいた。

向こうには妻がいて、その隣に妻の弁護士がいた。

決まった内容が一つずつ確認されていった。

僕は妻をじろじろ見るのも変なので、

横目で見た。

相手の弁護士越しに。

数年ぶりだった。

妻だった女を見た。

長い間一緒に暮らした人なのに、不思議な感じだった。

そして、その場で離婚が成立した。

結婚より離婚のほうが大変だった

結婚したときは、二人でこれからの生活を作った。

離婚するときは、その生活を一つずつ分解した。

マンション。

預金。

株。

家具。

子供。

そして最後に、夫婦そのもの。

それを2年近くかけて、一つずつ片付けた。

弁護士費用は約90万円。

高かった。

でも、今でも頼んでよかったと思っている。

お金を取り戻してくれたから、だけではない。

会いたくもない人間と、直接話さなくて済んだからだ。

離婚で一番きついのは、案外そこなのかもしれない。

結婚より離婚のほうが大変だ。

離婚する前は、よく分からなかった。

今なら分かる。

そりゃそうだ。

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