甥っ子は頭がいい。
でも、読み書きが極端に苦手だ。
いわゆるLD、学習障害というものらしい。
僕も最初はよく分からなかった。
「頭がいいのに、字を読むのが苦手ってどういうこと?」
でも調べてみると、頭の良さと、読み書きが得意かどうかは別の話らしい。
あのトム・クルーズも、子どものころ文字を読むことにかなり苦労したと語っている。
トム・クルーズだ。
人間の「できる」「できない」って、思っているよりずっと凸凹している。
その甥っ子が最近、
「塾に行った」
と嘘をついていたらしい。
実際には行っていなかった。
最初に聞いたときは、
「なんですぐバレる嘘をつくんだ」
と思った。
でも、これも調べてみると少し見え方が変わった。
LDなど学習に苦手さのある子が「宿題をやった」と嘘をつくのは、単に親を騙したいのではなく、苦手なことや怒られることから逃げるための防衛反応の場合もあるらしい。
もちろん甥っ子がそうなのかは分からない。
ただ、自分が人より圧倒的に苦手なことをやる場所に、毎日のように行けと言われたら、僕だって嫌になる。
そして、もう一人しんどくなっていた。
母親だ。
勉強しない。
塾にも行かない。
そのうえ嘘までつく。
「この子、この先大丈夫なの?」
親なら心配になると思う。
それで専門家に相談したらしい。
子どもの相談に行ったはずなのに、話しているうちに、
「まず、お母さんの方が少し楽になった方がいい」
という話になったそうだ。
なるほどな、と思った。
子どもがうまくいかない。
親が焦る。
子どもが苦しくなる。
逃げる。
親はもっと焦る。
どこかで止めないと、ずっと続く。
だから、
「なんで塾に行かなかったんだ」
の前に、
「なんでそんなに行きたくなかったんだろう」
と考えてみる。
そして子どものことばかりじゃなく、
「お母さん、大丈夫?」
と聞く。
案外、そっちが先なのかもしれない。


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