元妻は、自分の母親から毎月5万円くらいの健康食品を買っていた。
月5万円。
年間にすると60万円。
今こうして数字にすると、やっぱり結構な金額だと思う。
もちろん、僕のお金ではない。
元妻は働いていて、自分の給料から払っていた。
だから僕が、
「俺の金を勝手に使うな」
という話ではない。
それでも当時の僕は、ずっと思っていた。
これ、普通なのかな。
売っていたのは、元妻の母親だった
商品は「ノニ」だった。
当時流行っていた健康食品で、元妻の母親はその販売をしていた。
会社はモリンダというところだった。
いわゆるネットワークビジネスだ。
ここは誤解のないように書いておく。
ネットワークビジネスと、違法ないわゆる「ねずみ講」は同じものではない。
僕は当時、そんな違いもよく分かっていなかった。
ただ、
「人に商品を勧めて、販売していく商売」
くらいの認識だった。
そして元妻の母親は、かなり販売成績がよかったようだ。
海外にも行っていた。
何より、とにかく話がうまかった。
僕は義母の話術が怖かった
以前の記事にも書いたが、僕は途中から義母と目を合わせることすら嫌になっていた。
別に、ノニを売っていたからではない。
話していて勝てる気がしなかったのだ。
何かを言えば、倍くらいになって返ってくる。
こちらが説明しようとすると、その説明に対してまた説明が返ってくる。
そして最後には、
「自分のほうがおかしいのかな」
という気分になる。
商品を人に買ってもらう仕事で成績がよかったのだから、人を納得させる能力は高かったのだと思う。
その能力が仕事に向いていることと、
娘夫婦の間に入ったときにどうなるかは、
また別の話だった。
毎月5万円
元妻は、その母親から毎月5万円くらいの商品を買っていた。
自分の給料からだから、
「買うな」
と僕が命令するような話ではないと思う。
でも夫婦として生活している以上、気にはなる。
月5万円。
年間60万円。
5年なら300万円だ。
僕はノニの良さをそれほど信じていなかった。
だから余計に、
「そこまで買うものなのかな」
と思っていた。
ただ、義母にそれを強く言えるような関係でもなかった。
元妻自身も納得して買っていたのだと思う。
結局、僕は距離を置くようになった。
そして、もう一つ気になっていたことがあった
ここからは少し重い話になる。
元妻は妊娠して、初期の流産を経験したことがある。
本人にとって、相当つらい経験だったと思う。
僕にとってもつらかった。
そして当時、僕には一つ気になっていることがあった。
元妻がノニを飲んでいたことだ。
僕は医者ではない。
医学の知識もない。
だから、
ノニが流産の原因だった
なんてことは言えない。
今も言うつもりはない。
流産にはさまざまな原因があり、僕たちの場合に何が原因だったのかは分からない。
ただ、当時の僕は不安だった。
本当に妊娠中に飲んで大丈夫なのか。
「健康食品」なら、妊婦が飲んでも問題ないのか。
僕には分からなかった。
「お願いだから、ノニを飲まないで」
その後、妊娠が分かったとき、僕は元妻に頼んだ。
「お願いだから、ノニを飲まないで」
元妻は飲むのをやめてくれた。
そして、その妊娠では無事に子供が生まれた。
この二つの出来事に因果関係があったのか。
僕には分からない。
たまたまだった可能性も当然ある。
だから、
「ノニをやめたから子供が生まれた」
と言うつもりはない。
ただ、そのころの僕がノニに強い不安を感じていて、「飲まないでほしい」と頼んだ。
それは事実だ。
「健康食品」という言葉
当時の僕は、
「健康食品なんだから、そんなに危ないものではないだろう」
とも思っていた。
でも今は、少し考え方が違う。
「健康食品」という名前と、
「誰が、いつ、どれだけ摂っても安全」
ということは同じではない。
特に妊娠中なら、自分たちだけで判断せず、医師などの専門家に確認すればよかった。
今ならそう思う。
でも当時は、そこまで考えなかった。
ネットで何でも調べる習慣も、今ほどなかった。
義母は、
「体にいいもの」
として売っていた。
元妻も、それを信じていたのだと思う。
そして僕だけが、
「本当に大丈夫なのかな」
とモヤモヤしていた。
今でも答えは分からない
離婚してから、もう長い時間が経った。
だから今さら、
誰が正しかった。
誰が間違っていた。
と決着をつけたいわけではない。
ノニがどうだったのかも、僕には分からない。
ただ、今振り返って思うことがある。
僕が本当に嫌だったのは、健康食品そのものではなかったのかもしれない。
家族の中に「これは絶対にいいものだ」という価値観が入ってきて、それに疑問を持つことすら難しくなっていく感じ。
それが嫌だったのだと思う。
月5万円という金額もそうだった。
ノニもそうだった。
そして、夫婦のことに義母が入ってくるようになったときもそうだった。
僕はうまく反論できなかった。
だから最後は、義母を避けるようになった。
今なら、もう少し違うやり方があったと思う。
でも当時の僕にはできなかった。
人間関係というのは、
大きな事件が一つ起きて壊れるとは限らない。
「これ、普通なのかな」
という小さな違和感が積み重なって、
気がついたときには、もう元に戻れなくなっていることもある。
僕の場合は、そうだった。

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